
【図鑑1】
ラーズワールド創世の際、
闇の神によって創られた最古の悪魔の一人。
創生期には闇と虚無を司り、
世界における 力の均衡を取る事に貢献していた。
滅びを至上の喜びと考えており、
死を完成と称する独自の美学を持っていた。
自身の生に関しても、
死すまでの余興と考えており、 特に執着していなかった。
創世に関わる事業が終わったのち、
彼が闇の神より与えられた使命は 『ヒトを滅ぼすこと』だった。
ウィケッドはそれに従い、 長きに渡って戦うこととなる。
【図鑑2】
天魔大戦以降、ウィケッドは
基本的に強いものに従う悪魔・ケモノビト 陣営において、
実質リーダーとなった。
ただ、元来の気質から
悪魔は支配を受ける事を嫌っており
種として独立し出したケモノビトを容認するなど
天使側の勢力に比べると規律は緩やかだった。
また、ウィケッドは味方であれ、敵であれ、
他者に対してあまり関心を持っていなかった。
ただ、不死の悪魔と呼ばれたテロメアだけは
終焉を迎えることのない哀れな鬼子と呼び、
何かと気にかけていた。
【図鑑3】
ウィケッドは最古の悪魔でありながら、
天魔大戦の最後まで生き残っており、
彼の生は実に数千年に及ぶところとなる。
そして、ベンディスカ平原で行われた
天使勢力との最後の決戦において、
自分以外の悪魔は全滅し、
ケモノビトは全面降伏した状況を見て、
ついに自分自身が滅ぶ時が来たと確信する。
戦いの最中、彼はいかに愉快な 最期を迎えるか考えつつ、
天使やヒトの軍勢を倒していった。
ウィケッドが滅びたのち、
彼の死地は 決して消えることのない雪と氷に覆われ、
以降「ベンディスカ氷原」と 呼ばれることになった。
◆テロメア

【図鑑1】
神々の戦いが始まったころ、
闇の神によって 戦闘用に生み出された悪魔の一人。
かつては並外れた魔力の作用で、
不死と呼ばれる程の再生能力を誇っており、
どれだけ傷を受けても滅びることがなかった。
その異能というべき能力は、戦場にテロメアが 現れるだけで、
敵軍の撤退が検討されるほど、 相手に絶望感を与えるものであった。
彼女が座っている椅子のようなものは
下級悪魔で、カレクラと呼ばれていた。
カレクラはテロメアの忠実な配下であり、
意思表示をする程度の知性はあったが、
主の相当に荒い扱いにも、 不満を露わにすることは無かった。
テロメアはその高い再生能力から、 神々が去り、
天使や悪魔やヒトが滅んだ後も 自分は死ぬことができず、
永遠に一人退屈な 日々を過ごすのではないかという、
ぼんやりとした不安を抱えていた。
その不安から、ヒトはおろか、
同じ悪魔で あっても有限の命を持つものに対して、
羨望や嫉妬に近い感情と、そこから来る 嫌悪を抱いていた。
そして、時につまらなそうな仏頂面のまま、
その感情を戦場での破壊や殺気という形で 発散させた。
【図鑑3】
ただ、その性格は非常に面倒くさがりで、
基本的に戦闘以外の行動には乗り気でなく、
戦いにしても暇潰しとしか考えていなかった。
テロメアは同じ悪魔に対しても仲間意識を
持つような性格ではなかったが、
利害関係や相手からの感情のため
他の悪魔と行動を共にする事はあった。
特に悪魔ウィケッドからは、
終焉を 迎えることのない哀れな存在と見なされ、
気に掛けられていた。
また、テロメアは単純な戦闘力よりも
不死という特性が稀有であり、それを他に 利用できないかと考えた、
セルセラや ゴーシルといった悪魔から協力を 求められることも多かった。
彼女は不死性の影響から感覚が鈍く、 常に強い刺激を求めていた。
そして、非常に 辛い食べ物などを面白がって食べていた。
ことに、ドジという名の偶然の連続で
奇想天外な料理を作り出せる悪魔マニニには、
密かに期待を注いでおり、
彼女が 度々引き起こす出来事を観察しては
退屈を紛らわしていた。
ちなみにマニニからは テロテロと呼ばれていた。
◆マニニ

【図鑑1】
光の神ラティオと闇の神ナトラの対立が 決定的となった際、
戦力増強のため 闇の神ナトラに生み出された悪魔の一人。
本人は無邪気で、とてもいい子なのだが、
破滅的なドジっ子で、ドジを踏んだ時、
盛大に周りを巻き込む癖がある。
ヴェルガモをおねえちゃんと呼んで 慕っていたが、
ドジっ子のトラブルメーカーで あるため、ヴェルガモもマニニを恐れていた。
また、同じ少女の姿をしたテロメアと 仲が良かったが、
テロメアの保護者役である ウィケッドに見つかると、 いつも追い返されていた。
【図鑑2】
マニニのドジっ子ぶりは、まさに破壊的で、
移動すればうっかり爆弾を落とし 転べばカバンから爆弾がこぼれ落ち、
慌てると全身から爆弾をまき散らした。
そのドジのせいで敵に与える被害は 甚大なもので、
戦果だけで言えば 彼女は一軍の将クラスだった。
また、キラキラしたもの、特にアイドル活動に 憧れがあり、
一時期、海ノ国のケモノビト ジェリィと共に
アイドルユニットを 組んでいたことがある。
おしゃれにも大変気を使っており、
身につけている服やかばんは だいたい本人の手作り。
ただ、帽子の『トーピー』と、
ぬいぐるみの『りっぱくん』は例外で
彼らはマニニの忠実な配下だった。
マニニの成長に応じて、 彼らの身なりも良くなっていったらしい。
【図鑑3】
天魔大戦中期、ベンディスカ平原で
プレイパン王国を中心とした天使・ヒト陣営と
風ノ国を中心とした悪魔・ケモノビト陣営の 決戦が行われようとしていた。
その前夜、マニニはうっかり軍の格納庫で 道に迷い、
空中戦艦の中で疲れて寝てしまう。
翌日、目を覚ました彼女はさらに道に迷い、
あげく箱舟の中枢でうっかり転んで爆弾を まき散らし、
箱舟を航行不能にしてしまった。
既に前線に陣取っていた箱舟は次々と
他の箱舟や空中用要塞に衝突し、
ベンディスカ全体を巻き込む大爆発を起こす。
そして敵味方、貴賤を問わず、
その戦場にいたほとんどの兵士、将官、艦船、 空中要塞が消滅。
マニニ自身を含め、 天使と悪魔にも少なからぬ被害が出た。
全軍の半数以上を失った両陣営は
その立て直しに百年以上を要する。
その間、世界は初めて比較的平和な 期間を経験し、
文化的には大いに発展した。
◆セルセラ

【図鑑1】
創世期、必要に応じて小さなものから 大きなものまで、
様々なものを作るために 生み出された上位悪魔の一人。
自信家で己を天才と自負する型破りな探究者。
世界に点在する魔物の多くは彼女の創造物。
誕生当初からセルセラが作るものには 成功も失敗もあったが、
本人の前で 「失敗」は禁句であり、
『仮説と実証の間に生じた誤差の結果』と
言わなければ機嫌を損ねる気難しい面もあった。
ただ、彼女の性格自体は非常に大ざっぱだった。
セルセラは探究の余地がない『完成品』には すぐ興味を失ったため、
研究施設にしていた 箱舟の中は
研究対象外となった製品や試作品で 雑然としていた。
また、彼女は知的好奇心を満たすことを 常時優先し、
危険な研究に嬉々として、 着手するなど危なっかしい一面もあった。
セルセラは不眠不休で研究ができるよう、
肉体改造をした際に弱ってしまった視力を 補うため、
普段、特別なゴーグル、 または眼鏡を着用していた。
常軌を逸した行為を繰り返していたものの、
彼女は同族やケモノビトに、無用な 苦痛を与えるようなことは決してなかった。
【図鑑2】
出不精で他者と交流をほとんどしなかった。
セルセラにとって、比較的親交があったのが マニニとゴーシルだった。
マーニのドジが生む偶然の産物にセルセラは 知的好奇心を刺激され、
親しくなると時折、 外の用事も彼女に頼むようになる。
セルセラの研究施設に自由に出入りできた マニーは稀代の発明品、
あらゆる魔力を消し去る 『滅力兵器』の試作品を勝手に持ち出し、
友人を助けるために嵐の壁に穴をあけるなど 事件を起こすが、
試作品を作った時点で 滅力兵器は完成と考えていたセルセラは、
すでに興味を失っており、 問題視することはなかった。
ゴーシルは悪魔軍強化のために 度々彼女を訪ねていた。
セルセラは研究に興味を持ってくれる
彼を協力者と認識し、良好な関係を築いた。
その後、セルセラとゴーシルは手を組み、
合成獣プラーミャとストラーフを生み出す。
セルセラは彼女らの成長を見守っている内に
母性のようなものが芽生え、
プラーミャと ストラーフに思い入れを抱くようになった。
それゆえに、セルセラは彼女らが短命に 散ったことに不快感を覚える。
そして、その「誤差」を修正するべく、 すぐ新しい合成獣の作成を始めた。
【図鑑3】
セルセラは短命に散った創造物である
プラーミャとストラーフを葬る前に 彼女達から因子を抽出した。
記憶や魔力は因子レベルで引き継ぎが 可能ではないかと
仮説を立てたセルセラは プラーミャとストラーフ、
二人分の記憶と力を 有する合成獣の作成を試みた。
やがて、彼女らに似た合成獣が完成したが
眠ったまま目を覚まさなかったため、 セルセラは問題解決に尽力した。
しかしある日、滅力兵器の技術を危険視した
天使の暗殺者が研究施設に侵入し、 セルセラは瀕死の重傷を負う。
死の間際、完成には至ってなかったはずの
合成獣が起き上がり、暗殺者を倒す様を セルセラは見る。
プラーミャとストラーフの面影をもつ合成獣は
セルセラを見て確かに彼女の名を呼んだ。
実験が成功したと確信したセルセラは、
合成獣の調整を再開するため嬉々として 実験台の前に立つ。
『おいで。実験をはじめよう・・・・・・』という
言葉を最後にセルセラは絶命、消滅した。
機関部を破壊されていた研究施設の箱舟は 墜落し、
彼女の死の真相は 謎に包まれたままとなった。
◆サイリ

【図鑑1】
戦争遂行の妨げになる同族などを
捕獲、監禁、 管理することを目的に創造された悪魔。
空飛ぶ監獄艦ゲフェングの看守長を務めた。
時間的な性格で、相手を肉体的にも精神的にも
追いつめることを好む一方、極端にウブで、 恋愛の話はおろか、
「好きなもの」という 言葉すら過剰に恥ずかしがる。
監獄艦には、闇の神ナトラの意志を曲解し、
ラーズワールドもろとも敵を滅ぼそうとした 同族や、
手がつけられないほど狂暴な 魔物や悪魔などが収監された。
サイリは囚人達を激しく拷問し、 屈服させることで満足感を得ていた。
しかし、監獄内で自分に逆らう者が いなくなると、
サイリはしばらく 張り合いのない日々を過ごすことになる。
また、この頃、サイリは度々悪魔セルセラの 研究所を訪れ、
拷問器具開発に携わっていた。
ある日、実験失敗が原因で 醜い姿となったらしい
ドクロ型の下級悪魔を、 サイリはセルセラの元から引き取る。
彼女は単に奴隷を欲していただけなのだが、
醜い自分を引き取ってくれたサイリに 下級悪魔は恩を感じ、忠誠を誓った。
【図鑑2】
神々が戦場から退いた天魔大戦期、
監獄艦にベガドという悪魔が収監される。
彼は今までの囚人と違い、サイリの拷問にも
決して心折れることはなかった。
さらに何度罰せられようと、こりずに 脱獄未遂や、
彼の言動に心酔する 囚人達と共謀した暴動などを繰り返した。
彼が起こす騒動の鎮圧には手を焼いたものの、
その反抗的な態度を気に入り、
サイリは何かと 理由をつけて彼をいたぶった。
憎悪のこもった目で見られるたびに、
彼を支配しているという歪んだ高揚と喜び覚え、
体だけでなく心にも自分の存在を 刻みつけるように、
サイリは激しくベガドを拷問し続けた。
その衝動は愛にも似ていたが、
サイリは 最後までこの想いを自覚することはなかった。
【図鑑3】
千年続いた天魔大戦期が終盤を迎えた頃、
悪魔軍の拠点を次々に陥落させていた天使軍が、
ついに監獄艦ゲフェングまで攻めてくる。
監獄艦内は一時的な共闘を余儀なくされ、 サイリは看守達に指示を出し、
ベガドは自分に 心酔する囚人達を率いて防衛戦に臨んだ。
しかし、空中での防衛戦の最中、 サイリは不意を突かれ、
ベガドに心臓を貫かれてしまう。
いつか彼からの報復があるとは思っていたが、
この絶体絶命な状況で、復讐を優先するとは
予想しておらず、サイリは驚愕する。
しかし、ベガドがそこまで自分への憎悪で
心を満たしていたという事実は、
彼の中に自分の存在を刻みつけることができた 証明のように感じ、
サイリはどこか歪んだ満足感を覚えた。
そんな彼をもういじめられないと思うと
少しだけ寂しく思い、残念そうな笑みを 浮かべながら彼女は絶命した。
◆ベガド

【図鑑1】
創世期、神々がヒトを創る前の実験段階で、
通常天使・悪魔には施されていた
『神に従う』 という制約を取り払って創造された悪魔。
その性格は傲岸にして不遜、 しかも詰めは甘いものの計算高く、
己が世界を支配するという野望を抱いていた。
そのようにベガドは不遜な悪魔であったが、
神に従わない唯一の存在を面白がり、
闇の神ナトラは彼を好きにさせていた。
神々が対立し、神代戦争が始まると、
ナトラはラーズワールド中の悪魔を召集する。
しかし、ベガドだけはそれに応じなかった。
ベガドは戦争により二神が疲弊し、
あわよくば共倒れになるのを待って、
世の支配に乗り出そうと目論んでいたのだ。
果たして、神代戦争の結末は
ラティオとナトラの二神がラーズワールドから
退くという期待以上のものとなった。
好機と見たペガドは野望実現のため動き始める。
圧倒的な力と恐怖で配下を増やし、
悪魔軍・ 天使軍に次ぐ第三勢力となったベガド軍は
野望の障害となる天使軍の主力だけでなく
悪魔軍の主力までも次々に討ちとっていった。
ベガドは配下達にとって恐怖の対象であると
同時に、絶対の勝利をもたらす カリスマ的存在でもあった。
【図鑑2】
しかし、第三勢力を危険視した
天使と悪魔の 連続攻撃により、ベガド軍は壊滅。
彼は監獄艦ゲフェングに収監され、 野望は見果てぬ夢に終わった。
監獄艦では看守長のサイリに屈従を強いられ、
憎悪を募らせる一方、ベガドは彼女が
他者を支配することにしか存在意義を 見出せない同類だと気づく。
高慢な彼女を征服することは世界を征服するより
面白いかもしれないと考たベガドは、
サイリに 対して歪んだ独占欲を抱くようになった。
ベガドは他者に執着することなど 初めてのことで、
奇妙な感覚を覚えてはいたが、 それは気分の悪いものではなかった。
その独占欲は、ヒトなら一種の愛情と 呼んだかもしれないが、
一部の例外を除いて 悪魔にそのような概念はなく、
ベガドが その感覚をそのように認識することはなかった。
【図鑑3】
監獄艦の看守長サイリに屈従を強要される
日々は数百年に及んだが、天魔大戦が終局に 近づいたころ、
監獄艦もまた天使の大規模な 侵攻にさらされる。
サイリは、不足する戦力を補うため、
狂暴な囚人たちと共に ベガドをも一時的に解放した。
しかしこの時、ベガドの頭には、 サイリへの復讐心と支配欲しかなく、
天使との戦いの最中、彼は不意打ちで 彼女の心臓を貫く。
積年の願望を果たしたはずのベガドであったが、
サイリの表情は屈辱に歪むことはなく、最期は微笑を浮かべて絶命する。
ベガドにとってその表情は、 死してなお支配を拒む意思の表れに思えた。
その精神力に賞賛の念を抱き、
ベガドはサイリを最高の女だと認める。
そして気まぐれから、通常死ねば消滅する
悪魔の体に自らの魔力を注ぎ、 サイリの亡骸を保存することを思いつく。
この女を傷つけていいのは自分だけという 独占欲から、
ベガドはサイリの亡骸を 天使から守るように戦った。
しかし、圧倒的な敵の戦力を前に、
ついにベガドも抗しきれず、倒されてしまう。
そして、監獄艦ゲフェングも撃墜された。
ベガドの消滅と共にサイリの亡骸も消滅する。
消えゆく彼女の体にはベガドに 貫かれた傷以外は付いていなかった。
◆ルヴワール

【図鑑1】
創世期、悪魔なら誰にでもあるはずの羽を 持たず、
また、特定の能力や役割も与えられず 生まれてきた異端の悪魔。
ただ、危機に陥ったり、感情が高ぶると、
自ら『厄災の凶翼』と名付けた 魔力の翼が出現し、大きな力を発揮した。
しかし、この翼の力はルヴリール自身にも 制御が難しく、
しばしば周囲に 大きな被害をもたらした。
彼自身は無用の破壊を望んでおらず、
それゆえ普段は誰にも近づかないように 過ごしていた。
他者との関わりを断っていたとはいえ、
その気性は生来、自由奔放で、直感的、 勝ち気であった。
ルヴワールは、ある時より以前の記憶を 失っていた。
ただ、おぼろげな記憶の中で、
誰かに 『命を慈しみなさい』と教えられたことと、
それがとても大事なことだということだけは 覚えており、
その教えに従って、 何かを殺すことも、
死ぬのを見過ごすのも 避けようとしていた。
そのことが、役割の根本に破壊することを
定められた他の悪魔たちには奇異に映り、
ルヴワールは悪魔軍の中でも 浮いた存在となっていた。
【図鑑3】
そんなある時、彼はハルアという天使と 知り合い、
自分が振りまく厄災に 「慣れている」と言って動じない彼女に 興味を持つ。
たまに顔を合わせる程度の関係だった二人だが、
他者との関わりを断っていたルヴワールには 貴重な話し相手であった。
その後、天使と悪魔が対立するきっかけの
ひとつとなる事件で彼らの運命は 大きく動くこととなる。
◆ナヤーナ

【図鑑1】
神々の争いが始まった頃、闇の神に 創造された悪魔の一人。
火眼と呼ばれる 珍しい能力を持っていた。
その眼の力は視線を合わせた相手に
強力な火属性の呪いを与える魔眼の一種で、
耐性の低い者に対して振るえば、
一瞬で、 炭化させてしまうほどの威力を秘めていた。
凶悪な能力に反して性格はとても穏やかで、
争うこと自体を嫌う性分をしていた。
また、自身の能力も嫌っており、
必要に通られてもあまり使いたがらなかった。
本人にも能力の制御は難しく、
意識的に威力を強める事は出来ても 弱める事は不可能で、
日頃は 目をフードなどで隠して過ごしていた。
悪魔としての位階はかなり高位だったが、
内気で自分を責めやすい性格をしており、
誰に対しても物腰は低く、敵味方問わず、
ほとんどその態度を変えることはなかった。
不便な能力やその性格もあってか、
兵を指揮する役にはほとんど就かず、
単独ないし少数の仲間と行動する事が多かった。
【図鑑2】
ナヤーナは、とある戦場で傷を負い、
味方と合流するまで、森に身を 隠していたことがあった。
その時、敵方であるヒトが一人近づいてくる 気配を感じる。
彼女は身構えたが、 その相手は目が見えない様子で
彼女が悪魔だとは気付かなかった。
そして、彼女の傷の手当てをしてくれた。
その短い出会いの中で、ナヤーナは 相手の優しく、
穏やかな人柄に 心惹かれていくのを感じた。
本拠に戻ってからそのことを 友人の悪魔ヴェルガモに話すと、
『何だかよく分からないけど、 ナヤーナ楽しそう』と
そう言って、色々と相談に乗ってくれた。
その相手のことを思っているわずかな 時間が最も尊く、
輝いていると感じていた。
【図鑑3】
彼女は料理を趣味としていたが、
実のところ腕前はあまり芳しくなかった。
慣れないながらも作成した料理を
美味しいと言ってくれた人物のため、
何とか腕を上達させたいとは思っていた。
その相手への恋を自覚してからは
友人の悪魔ヴェルガモに手を引かれ、 危険な敵地であるにも関わらず、
相手の元へ料理を作りに行った事まであった。
しかし、そのすぐ後、
ナヤーナは、 戦場でその思い人と出会うことになる。
しかも、目の見えないその相手は
敵がナヤーナだと気付いていない様子だった。
彼の矢が彼女の方へ向けられた時、ナヤーナは、
今自分が声を出して彼が攻撃をためらえば、
彼に敵と通じている疑いがかけられると考えた。
倒される相手が彼ならばと彼女は微笑む。
そして、彼女はそのまま、 恋する相手の矢を胸に受けた。
『ごめんなさい、バルデル・・・・・・』
そう言い残して、ナヤーナは消滅した。
◆ヴェルガモ

【図鑑1】
闇の神ナトラが敵対するヒト・天使陣営の
戦力を削ぐために創造した悪魔。
男性を強く魅了する容姿と魔力を 持っており、
彼女に魅了された者の多くは、 その生命をも吸い取られた。
性格も能力に合ったもので、 生命力を吸い取る事を楽しみ、
またその際に得る快感をも楽しんでいた。
【図鑑2】
ヴェルガモは、その能力とは関係なく、
個人的な主義から、自分の美容に対して 過剰な程に気を遣っており、
化粧水やクリームといった物を用意しては 大量に使っていた。
周りの女性悪魔にも勧めていたようだが、
ヴェルガモほど自分の容姿に頓着している者は いなかったため、
彼女は若干その事を 不満に思っていた。
そんな中で、 女悪魔のナヤーナだけは、 その趣味につき合ってくれていた。
また、ヴェルガモはその能力ゆえに、
どれだけ生命力と魔力を集めても、 満たされることがなかったため、
次第に、 ヒトなら『むなしさ』と呼ぶであろう
感覚に似たものを感じるようになっていた。
【図鑑3】
天使陣営の夜の平安を脅かす ヴェルガモの悪名が広まり、
指揮官級への 夜襲が上手くいかなくなってからは、
サキュバスという魔物を造り出し、
彼女らに自分の役割を一部代行させていた。
魔物のサキュバスは、その生き残りが
自身の魔力で増殖したものと言われている。
かなり大雑把な作戦ではあるが、
前線では それなりの戦果を上げていたようで、
天使陣営にとって頭の痛い存在とされていた。
その頭痛の種は上級天使を動かすこととなり、
ある時、天使ラディウスの指揮の元、
討伐戦が行われ、討ち取られてしまう。
魂がアパティアに収められた際、
強い吸精の力と、サキュバスを生む力は 失われてしまった。
◆ゴーシル

【図鑑1】
神代戦争前後に創造された悪魔の一人。
主に諜報やかく乱を役割としており、
直接的な戦闘よりも権謀術数と情報収集で 数々の功績を上げた。
通称「嘘つき悪魔」。
変身や他人を騙すような魔術を 得意としており、
それらを利用して 天使・ヒトの陣営に潜入しては、
敵の配置を始めとする様々な情報を得ていた。
己の使命を愉しみつつ、悪意を持って 戦況をかき回す事を好むという
天使・ヒト陣営にとっては厄介な悪魔だった。
明らかに胡散臭い雰囲気なのだが、
口が上手く、相手を言いくるめて いいように利用するのが得意だった。
【図鑑2】
神々が姿を隠し、天魔大戦が始まってから、
ゴーシルは益々各方面で暗躍するようになる。
前線に立つ事はほとんど無かったが、
裏でケモノビトの強化計画を実行したり、
天使・ヒト陣営の要人を暗殺したりなど、
要所要所で戦略上の成果を上げた。
ただし、そのトリックスター的行動で、
味方陣営に損害を出す事もままあったため、
一部の悪魔やケモノビトからは 快く思われていなかった。
特に前述のケモノビト強化計画では、
被験者となったケモノビト達に副作用の説明を あえてしなかったため、
二次計画以降が 実施されなかったなど迷惑な面が目立った。
【図鑑3】
ある時、ゴーシルが天使の陣営に 潜入したところ、
最上位の天使の一人が 単独で行動している場面に遭遇する。
彼は主要な敵の性格も把握していたため、
その天使に対して最も効果的な相手を選んで 変身し、
その人物を装って天使に接触する。
結果として、その天使を騙し討ちする事に 成功するが、
直後に変身した相手が 現れるという不運に見舞われ、
怒り狂った その人物に瀕死の重傷を負わされた。
ただし、ゴーシルもただでは死なず、
その相手からの猛攻を受けながらも、 どうにか自陣まで撤退し、
死にゆく自分に代わって、激昂する相手を
同胞の悪魔テロメアに討たせるよう 仕向けてから、
満面の笑みで息絶えた。
※googleドライブ経由で書き起こしています
※白いドットのようなノイズが入ってる画像もありますが仕様です